IN THE SKY

 風が吹いていた。
 自然に吹き込む風ではない。この地方──いや、国特有の砂漠の風などではない。
 「それ」は巨大な要塞が墜ちながら飛んでいくが故に巻き起こされた風だった。
 風は吹く。
 主を失った要塞は墜ちていく。
 感極まった声で「自由」を宣言した王女の声を聞きながら。
 それを力強く支持した若き指導者の声を聞きながら。
 感情のやり場を失い、だが心の中では彼らの声に納得し動きを止めた兵士達の前を。
 そして、ラバナスタの都の上を。
 墜ちるように、だが、確実に要塞は──もはや無人にして制御不可能なはずの要塞は、空を飛んでいた。

「ソレイユ、聞こえるか?」
「感度OK、よく聞こえるぜー! ルネ。ちょーっと耳がキーンってしたけどな」
 ソレイユと呼ばれた男は、飛び込んできた無線に答えた。その間にも操縦桿を操り、己が空母に戻る味方や元・敵をすり抜けていく。
 視界には自分と同じように飛んでいるルネの機体が見える。
「まあ、それは仕方ないだろ。あの王女様完全にパニクってたもんな」
「だな。羨ましいっつーか、甲斐性なしっつーか」
「それって俺達全員そーだろが。……っと見えてきたぞ」
 ソレイユは頭に乗せていたゴーグルを取り付け、いくつかのスイッチをオンにした。まったく、と自分の口が何かをつぶやいたような気がするが、それに構っている余裕は実はない。
「こちらルネ、あー、いたいた。実に分かりやすいところにいやがるっていうか予想どおりで結構!」
 同じようにゴーグルをつけたルネが──ソレイユもルネも己の名前ではなく機体の名前だが──コックピットを開く。瞬間、少し長めのルネの髪が一気に風になびいた。
「言葉を変えれば実に墜ちやすいところとも言うがな……っと。1機1人、後で合流、OKかルネ!」
「OK、OK! 奴も気付いたようだ!」
「いくらなんでも気付くだろ!」
 コックピットを開け、できうる限りの低速で要塞バハムートに近づく。──そう、死に掛けの要塞を飛ばし続けていた男のもとへ。
 記憶の中では細目だったような気がする男は、大きく目を見開いていた。ヴィエラの娘(年上かもしれないが)を抱え、何かを覚悟したような佇み方をして。
 ソレイユは小さく、ふ、と笑った。そうして息を思い切り吸い込む。

 弟へ、叫ぶ。

「ひっさしぶりだな、ファムラン! 迎えにきてやったぞー!」
 ルネ──すぐ下の弟──の声が自分の声に続く。
「とっとと乗れ! こんなところで終わるようなタマか、お前は!」

 要塞の男は一瞬茫然とし。
 そして、二人の兄の言葉ににやりと笑みを浮かべた。
POSTSCRIPT : 20060324

 シュトラールが「星」っていう響きがあるなあって思ってて、バルフレアが三男坊だって知って、上二人がどうなってるかよく覚えてないんですが、クリアした直後にとにかく機体が「太陽」と「月」っていう感じ(「月」は本当はルーナですがなんとなくルネになりました)の兄貴二人がきっとバルフレアとフランを助けたんだよ!と勝手に勝手に判断。